クリスマスにクリスマスを辞めたくなった話
どうも、こんばんわ。こんにちは。あるいはおはようございます。

私は上勝町でレストランを経営しています。表原といいます。おもてはらと読みます。
縁があって私は今上勝町で料理をしていますが、ゲストとして今回書かせて頂く記事はタイムリーなクリスマスのお話。

…そのクリスマスを辞めたくなったお話。
クリスマスといえばレストランは一年の中でも特別な思いのお客様が集まる日。海外では家で過ごすのが主流と言われてますが、そこんとこは良く知りません。(国によってまちまちだと思うからです)当店でも2年目から、クリスマス前から特別メニューをやっていました。(開業が12/6だったので初年は間に合わず…)
てなわけで今回はそう思っちゃった経緯をお話します。
実は今年は当店にとっては特別変化のあった年でもあり、話は遡りますが、7月から海の魚を使うのを辞めていました。キッカケは昔淡路島時代に知り合ったシェフの方と話していて、「表原くん、魚辞めてみたら?」と言われた事です。
考えてもいませんでした。修行してた先は山形のアルケッチァーノというお店の東京と淡路島の支店。アルケッチァーノは山形の山の幸や海の幸をふんだんに使った沢山の皿で構成されてるコース料理を主に出しているお店で、コースの最初から最後まで、7割は魚を使った複雑な料理で、魚を使うことが毎日布団で寝るように、いや呼吸をするように当たり前な僕からすると、
ファ!?
っとなりました。言われた時の感想ですよね。でもそれと同時に自分の中にもほんの少しだけ魚に対して疑問に思ってた事にも気付きました。魚はいつも徳島中央市場に買いに行っていました。朝弱い私は市場の駐車場でよく寝てました。(たまにぐっすり8時まで)魚を買う事で、今日は良いのあるから大丈夫。と安心し、1時間かかる道のりを鼻歌交じりに運転して帰ります。
その道中、
[魚がなかったら危なかった。なんも無いまま料理しなきゃいけなかった]
[って魚がないと何もできへんやーん。ウケる〜]
[ってウケてる場合か。何もできへん事を認めてどーする]
[………そーいえば鮎とかアメゴとか最近使ってないなぁ…]
と、こんな一人漫才を道中する訳です。
地元の天然鮎も一度使った事はありましたが、なかなか欲しいものがなく、市場で琵琶湖の養殖買うなら使わなくていっか。となっていました。地元の鮎でネックだったのは、[砂抜き]が出来てないのがほとんどだった事。もちろん私自身がキチッとお願いすればイイのです。しかし鮎を釣ってらっしゃる方はほとんどが趣味で、そこまでするのは面倒だと言われたことも沢山ありました。単価を払うと言っても一匹500円も出せませんし、お願いする立場としては非常に難しい話でした。
普通に食べる分には砂はなんら問題は無いんですが、たまに鮎のハラワタを食べるとジャリッとするアレが砂です。僕自身、アサリとかシジミとかめちゃ好きなんですがどうしてもジャリッとすると一気に冷めてしまう。だから店で使うのは貝類さえ躊躇していました。
貝を出すときは、
[充分砂抜きをした状態ですが万一の場合がありますので気になる方はどうぞ残してください]
と一言添える徹底ぶり。
なので砂抜きしてない鮎はハラワタをとって使うしかありませんでした。
鮎はハラワタが美味しいのに…って思いから使うのを辞めていた理由です。
てな訳で絶賛市場通いに拍車がかかってました。

そんな時に言われた衝撃の言葉。僕としたらファ!?ってなった2秒後に「これは痛いところを突かれた…」と思いました。その方は、使う食材ほぼ全てが淡路島産(この間は砂糖ぐらいじゃないかな他所のはって言ってた)で、生ハムから小麦まで、自家製。なのでそれを言われて手も足も出ませんでした。地産地消とは名ばかりだった…
俺、全然まだまだや…ぐぅ。
必要なのは最近流行りのエシカルとかそんな言葉じゃなくて、「一つのことに拘り抜く」確固たる意志。そこで料理をする意味。なのでまず僕も、
よし。辞めよ。魚辞めてみよ。
別に告知をしてるわけでもなく突然に始まった魚辞めてみましたキャンペーン。
辞めてみるとこれが不思議なんです。地元の食材達が勝手に飛び込んでくるんです。地元の学生が鮎釣りをしてて、その鮎で燻製を作りたい。と相談され二つ返事で招き入れ、燻製を作りながらそそのかしました。
「鮎釣りで…小遣い稼ぎせえへんか?」
そうすると、その子が頑張って釣ってくれているのがやがて地元の有名な鮎釣り師の方の耳に入り、
「活鮎がいいんやろ??」
と沢山の活鮎を持ってきてくれたのです。

「あ、あと息子がアメゴ養殖してるから良かったらつこてよ!」

えぇーーー。こんなことあるのか。と思いました。そこから川ガニや場所は違いますが養殖ウナギ。いろんなモノが見つかりました。あぁぁ。探してなかったんだな。と。あるやん。いいもの沢山。なんで今まで探してなかったんだろうか。めっちゃ反省しました。そんなこんなで忙しい夏と紅葉の時期を無事海の魚無しで、素晴らしい出会いのお陰で走り切れたのでした。
さて、話は戻りクリスマス。以前のクリスマスは、
トラフグ(k/4000〜時価)
白子(1pc/3000)
キャビア(50g/6000)
フレッシュフォアグラ(k/6000)
真鴨(k/3500〜4000)
黒トリュフ(k/210000!!!!)
気合いを入れて、フランス、イタリア、ハンガリー。ありとあらゆる場所からキンキラキンのお高い食材を集めていました。
以前ならそんなキンキラキンの食材を使うことに少し罪悪感があるかないかって感じでした。でも今はかなりある。でも冬はどうしても鮎もカニもない。お肉以外タンパク源がほぼなくなってしまう。何皿も出す自分の10000円のコースで表現するのにはちょっと重い。、こりゃ困った。ならクリスマスなんかやらなきゃいいのに。ほんとそう。ただ、一年の締めくくりにふさわしい料理をしなきゃいけない。変化があった年。平成元年生まれの20代、そして平成最期のクリスマス。最後尽くしの今年でクリスマスメニューをやめるってまぁキリがいい。
ぁぁ神様。最後のクリスマスは海の物を使う事をお許しください。キャビアだけにしますから。そんな思い。
空輸するのはエコじゃない!輸入はコストが!ゴミが沢山出る!フォアグラやキャビアは動物虐待だからエシカルじゃないから辞めたい!って話ではない。そもそも何かを辞める理由を他者に求めたくない。自分が使いたくないって気持ちを大切にしたい。
もちろんエコとかエシカルに絡めようはいくらでもあるが言いたいのはそんな言葉だけの流行り廃りじゃない。自分がどうしたいか、どう生きていきたいか。どんな料理人にたりたいか。お皿に今の自分をどう映すか。これはパフォーマンスじゃない。ほんとは使いたくなかった物、やりたくなかった事に悩んだり苦しんだ物語を全部まとめて料理したい。
クリスマスは平成最後の今年で終わり。なのでちょっと特別なクリスマス。暴れてやるんだから!ぐっばいクリスマス!!来年からはもうやんねぇから!!
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表原平(Tira Omotehara) twitter Instagram
1989年7月に徳島県徳島市(厳密には小松島の日赤病院)に生まれ。小中高と野球漬けの日々。21歳の時に料理人を志し、上京。東京で数店舗、その後淡路島野島スコーラを経て、2014年の12月に上勝町でペルトナーレをオープン。29歳。[/su_column][/su_row]
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ペルトナーレ(pertornare) Facebook Instagram
所在地/徳島県勝浦郡上勝町福原字平間62番地
営業時間/ランチ 12:00~15:00(L.O14:00)
ディナー 完全予約制(前日までの予約)
定休日/月曜日 電話/080-3165-7153[/su_column][/su_row]


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