伝統を引き継ぎ、守っていくということ

「田舎の昔の家」と聞いたら、どんな家を思い浮かべますか?
囲炉裏があって、茅葺き屋根で、ご飯はかまどで炊いて…。
絵本に出てくるようなこの家をみなさんも思い浮かべると思います。

そんなThe田舎の昔の家が上勝町にももちろんあります。
茅葺き屋根の家は今では町内1軒だけになってしまいました。
誰かが住んでいるわけでもありません。
現在はNPO法人が管理をして、体験などに使用されています。

上勝町の一番奥の集落“八重地”という場所に茅葺きの家はあります。
ここは、上勝町の中心部からも車で15分〜20分ほど離れていて、いわゆる秘境のような場所です。
でも、夏はあたり一面が綺麗な緑色に染まり、標高が高いので青空がとても近くに感じられます。
そして涼しい風が吹く。
とても素敵なところです。

今年この茅葺き屋根の修復をするということで、現在体験型で作業を進めています。
ここで今さら聞けない!質問。

「“茅”ってなに?」

みなさん答えられますか?
茅という名前の植物は存在しません。
主にはススキですが、その他チガヤやヨシなどイネ科の植物で屋根を葺く草の総称です。

茅葺き屋根は15年〜20年くらいごとに葺き替えをします。
一気に全部を葺き替えするわけではなく、屋根の東西南北4箇所を1面ずつ葺き替えていきます。
また、傷んでいる部分に茅を差して補修していく“差茅”という方法があります。

私も茅葺きの修復作業の一部を体験してきました。
まずは、材料となる茅を集めます。

昔はどこも茅葺き屋根だったこともあり、茅がたくさんある場所を“茅場”と呼び、そこで茅を確保していました。
その名残でいまだに茅場が存在しています。
今回行ったのは、上勝町の中で一番高い山。高丸山です。(標高約1,438m)
八重地集落からは車で10分〜15分くらい。
茅場の標高は1,000mほどの場所です。

茅は鎌や草刈機で刈り、束ねていきます。
切りたての茅はすぐには使用することができません。
束ねた状態で乾かして、しっかり乾いてから屋根の葺き替えに使用できるのです。
なので、今回収穫した茅は次回の葺き替え分。

昔は屋根の葺き替えも近所同士で助け合い、1軒1軒その集落の人たちで集まって順番に行っていました。
例えば今年はこの家のこの部分、次はお隣のこの部分。というふうに。
茅場は集落ごとに同じ場所を使用していたので刈り取っては乾かして、この茅はどの家の分。というふうに使っていたそうです。

刈って、束ねて、乾かして…
これだけでも重労働です。
そしてこの場所から、家まで運んで葺き替えをする。
もちろん車も機械もない時代です。
大変な苦労が目に浮かびます。

今回私が体験させていただいたのは、茅を束ねる作業だけでしたがこの作業を複数人数で1日行っても修復には全然足りません。
何日か刈っては束ねて、ようやくそれで材料が整ったというところです。
そこからさらに運んで、屋根に足場を組んで、やっと本格的な修復作業に入ります。

この茅葺きの家をこれからも残していくために上勝町では、町民はもちろん町外の方でもこの茅葺き屋根のことを知りたい、学びたい、体験してみたいという方を募集しています。
ぜひ、興味のある方はお越しください。
普段はなかなかできない体験がたくさんできます。

  

実は、3年前にこの茅葺きの家で友人の結婚式を行いました。
全て手作りの結婚式。
一般的な結婚式とは違いますが、手作りならではのあたたかさと何よりこの家も今では誰も住んでいなくてもこうして使用してもらえることで、みんなが集まってくれるそんな場所として生まれ変わって喜んでいるように感じました。

上勝町を守っていくということは伝統ある家や暮らしを受け継ぎ守っていくということ。
これからもいろんな形で続けていきたいと思います。

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