失われてしまう”自治”とは何か
3月になり、ずいぶん暖かくなりました。
毎年この季節になると、私達を悩ませるこの人たちの存在。
3月のカバー写真、みるだけで辛い。
上勝の山は、ほとんどが杉、杉、杉。
パッチテストでは犬以外のほぼすべてのアレルギーを持つ私にとって、やっと寒い冬を越えたかと思い始めたころにまさに泣きっ面に蜂。
上勝町で一番高い山、高丸山。1400mくらい。
そんな季節ですが、少しずつ自然が色づいたり、
ハイキングを楽しめるいい季節でもあります。
山頂では木の先にだけまだ残る雪。日に当たり溶けて落ちていく春の足音が聞こえました。
デンマーク人のカトちゃんと、ふらっとカフェを訪れたフランス人のアスちゃんと、
天気も良かったので高丸山をハイキング。とても気持ちよかったのですが、結局このあと花粉症がひどくなって大変でした。
さて、今回のお話は、「上勝百年会議」というイベントについて。
「上勝百年会議」とは、上勝町を100年後まで残すために私たちは今何をしないといけないのかをゲストを招いてお話を聞きながら学んだりみんなでディスカッションするイベントです。
私達がcafe polestarを始めた7年前からスタートし、今回で21回目。
今回のゲストは、上勝から山を越えてお隣にある佐那河内村の総務企画課、
安富圭司さんをゲストとしてお招きし、お話を伺いました。

安富さんと上勝町との関係は古く、環境分野の担当もされていたため東ひとみさんとも懇意な間柄でした。ともに県外のごみ処理施設へ視察に行き、焼却、埋め立て処理が如何に自然に悪影響を与えているか、自分たちの地域の環境を守るためになにをすべきか考え行動されてきた同志だったと思い出を話してくださいました。

上勝町から学んだことは具体的な方法論ではなく、その思想であり取り組む方々の情熱やその姿勢だと安富さんはお話してくれました。そのため上勝とは方法は違いますが、自治会に任せ個々で取り決めた決めたルールに則った運営で独自の回収システムを構築し、全国的に見ても高いリサイクル率を誇っています。
今回のお話では、ざっくばらんに佐那河内の今を教えてほしいとリクエストしていたので、防災拠点も兼ねたシェア加工所、地域交流拠点施設である新家について、移住者が増え新しく起こっている事業の話、様々な取り組みや安富さん自身が地域に対して思う考えをお話いただきました。
その中でも私が最も印象深かったのは、最後に参加者から出た、
「地域の再編を何故止めたいのか」
という質問でした。
安富さんは、再編自体は悪いことではないと前置きした上で、
「政策的な再編により、地域による自治が失われてしまうから」
と答えられました。
失われてしまう”自治”とは一体何か。
自治というのは、読んで字のごとく、自ら治めるということです。
上勝町に来て一番驚いたのは、住民ひとりひとりが持つ、自分の地域への自治意識の高さです。80歳を超えるおじいさんが講演会に参加し、自分がいないかもしれない未来の町のあり方について議論を交わすのが日常風景。これは、新興住宅地のような計画的につくられた地域で育った私には、衝撃的な出来事でした。
地域が自治するためには、住民は地域の権利と同時に義務を持たなければなりません。
義務を持つからこそ、どれだけ人数が減り、公助の範囲が小さくなろうとも、地域の意思で地域は維持することができるのです。
血縁地縁的な場所性に囚われず課題や興味でつながる新しい家族や地域のあり方というのも否定はしませんが、おそらく一番難しいのは、この権利だけでなく義務を持つという意識を、どこまで持てるかではないかと思います。
コミュニティを維持するために自己犠牲を払うという感覚は、仕組みづくりだけでは実現できない何かがそこにあるのではないでしょうか。
(ないのかな、あまり詳しく知らないのでまた誰か教えてください)
しかしそうは言っても現実として、人口は減り続け、高齢化は進み続けています。
そうした会で元気だった方たちも、少しずつ少なくなってきているように思います。
昔は20戸で回していた当番も、気づけば10戸になり、いつのまにか2,3戸しかいないというのが今の実状です。
現実的に考えて、あらゆる自治区分の再編なくして地域を継続していくのは不可能でしょう。
おそらく今地域が抱える問題は、この再編の進め方にあると思います。
自治を放棄するのではなく、自ら新しい自治の形を住民主導で作らないといけない。
おそらくそこには何かを辞めるという決断や、自ら終わりを迎えることを決めなければいけない集落もでてくるはずです。
続けてきたことを変わらず続けることと同じくらい、辞めることもまた重要なことなのです。その決断を、今、地域はしなければならない。そうすることで、地域が自治されていくことだけが変わらずに残っていくのではないでしょうか。
上勝百年会議という名前は、上勝町という町がこの先100年、
200年と続いていくようにという思いで名付けました。
それは、決して上勝という自治体の区分が残ると言った形式的な意味ではなく、今の上勝のように、自分の住む場所や属するコミュニティにプライドを持った人たちが生きる地域や価値観を、守り続けたいという意味なのです。
そんな事を、安富さんのお話を聞きながら改めて思った百年会議第21回でした。
最後に、
上勝百年会議では、ゲストスピーカーを常に募集しております。
一度上勝へ行ってみたいけど、どうせいくならもう少し深く関わりたいと思っている方、自薦他薦問いませんのでぜひご連絡ください!


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