読書感想文:田舎の未来 / さのかずや
若者の活字離れと言われて久しいが、例に漏れず松本の読書離れも進んでいる。
その原因のひとつに、地方は車社会という問題があるように思う。
地方ぐらしと東京ぐらしの大きな違いのひとつは、公共交通機関の脆弱性だ。
特に上勝町のような過疎地域では、どこへ行くにも車が中心。
気づけば、東京から徳島、上勝に移住して8年にもなる。
おかげで1時間程度の運転は苦にならなくなったが、
主な移動手段が電車から車に変わったことで、
めっきり本を読む時間が減ってしまったように思う。
(年齢とともに集中力が下がってきたという問題も大きい気がするが・・・)
ということでこの場を使って、たまには読んだ本を紹介することで、自分に本を読むことを課してみようと思う。
記念すべき1冊目。
さのかずやさんの”田舎の未来”
2012年9月、教育実習で帰省していた北海道の実家で書いたブログが大きな反響を呼び、それから7年間、大学生、広告代理店、大学院、再び会社員、そしてフリーランスと立場を変えながら、ずっと「田舎の未来」のことを考え、実践し、試行錯誤し続けている若者の記録。(背表紙見出しより)http://tababooks.com/books/inakanomirai

著者のさのさんご自身もご活動も全く知らなかったのだが、軽快な文章で読みやすくボリュームも大きくなく、リハビリにさくっと読むにはぴったりかなと思い、本屋でなんとなく手にとった一冊。
正直に言うとこの本に対して学びという意味ではそれほど期待していたわけではなく、予想通りこの本から地域づくりの画期的なアイディアや新しい知見が得られた訳ではなかった。(というか、そもそもそんなものを期待して本なんか読んじゃいけない)
この本に描かれていたのは、私自身だった。
正確に言うと、ほぼ同時期に田舎という不合理生の塊に真摯に向き合い、試行錯誤を繰り返した若者の姿だった。
少し年齢は私のほうが上だし、彼がフィールドとしているのは北海道で私は徳島という大きな違いはあるし、取組内容も違う。
彼の成果やその深い洞察は、私より何歩も先を行っている。
それでも、根底にある悩みや葛藤を抱えながらも前に進んでいく過程を読んでいると、自分のことかと錯覚するほどだった。
彼の軌跡を読むことを通して、自分自身の8年間を振り返るという、非常に貴重な体験だった。
自分が取り組んできたこと、そのときに感じた思いを、もっときちんと書き残しておけばよかったという後悔とともに、また少し先の未来に、もう一度読みたい一冊。



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