ゼロ・ウェイストの町上勝と、東輝実のこと。

どうも、てるみです。
今年1月初旬にパリから友人のますゆかこと、Masuda Yukaちゃんが上勝に来てくれて、その時の感想を記事にまとめてくれました。ということで、今週はたくやの番を奪って彼女の記事を掲載させていただきます!

パリで生活する中での変化や、彼女自身が上勝に来て感じたこと、考えたこと。
私自身も自分の視点から日々見ている上勝を改めて客観的に見られました。

ではでは、始めましょう!

私が「てるみん」と呼んでいる東輝実に会ったのは10年前、大学4年生の頃だった。
当時働いていた会社がシェアオフィスに入居していて、てるみんはそこにあった小さなカフェでインターンをしていた。同い年だったからなのか私達は仲良くなり、仕事の合間に阿波番茶を買いに行って、てるみんとちょっとお喋りして帰るのが、ストレスの多い職場で私の何よりの癒しだった。

その後に職場を逃げ出して辞めて、てるみんともお別れを言わずそれっきりになってしまったのだけど、数年後にFacebookで繋がって、会うことはなかったけど、彼女の人生のアップデートは追いかけ続けていた。

てるみんは将来カフェをやりたいと言っていた。
あの頃なんとなくカフェをやりたいと思っている若者はたくさんいたし、何なら私だってぼんやり思っていた。大学を休学してカフェでインターンするくらい本気だったから、きっと夢を叶えるんだろうとは思っていたけど、実際に生まれ育った上勝でカフェをオープンしたと知ったときは、本当にすごい人だなぁと思った。でもあの頃ゼロ・ウェイストは自分から遠い言葉で、どういうことなのか全くわかっていなかったし、「ゴミを無くそうとしているんだ、へぇ〜」ってくらいの感想で、ただただ夢を叶えた人として、彼女のことをすごいなぁと思っていた。

それが去年から急に、パリに住む中でゼロウェイストが身近な言葉になった。
グレタ・トゥーンベリのスピーチを見てから変わらなくちゃいけないと思ったと、周りの友達でもゴミを減らそうとする人が増えたし、ランチを買いに行くお店でも、マイカップやマイボックスを持参すれば50セント(約60円)引きにする店が増えた。また去年参加したベルリンでのTechカンファレンスでは、1000人以上の参加者がいる中で、ペットボトルは一切なく飲み物は全て瓶、使い捨ての食器もなし、ごはんもベジタリアンかヴィーガンメニューだけだった。運営的にはペットボトルや使い捨ての容器を使う方が楽だろうけど、そうはせず環境に配慮したカンファレンスにすることを目指していた。

そういう環境にいると、さすがに私も無関心でいるわけにはいかなくて、ゴミを減らせるところから減らそうと、コーヒーをテイクアウトするときはマイカップを持って行ったり、マイボトルを持ち歩いてペットボトルを買わないようにしたり、少しだけど前よりかなりゴミについて意識するようになった。

上勝に遊びに行くと約束したことはずっと覚えていたけど、結局一度も行けていないことに罪悪感があったし、ゼロ・ウェイストにも興味があったし、年末年始の一時帰国の際に、10年ぶりの約束を果たすため上勝へ行くことにした。

正直てるみんと会うことにめちゃめちゃ緊張していた。以前よりはゴミを減らす努力をしているけど、ゼロ・ウェイストには程遠いし、私なんかが会っていいんだろうか、努力が足りないと呆れられるんじゃないかと心配していたんだけど、本当に無駄な心配だった。何十年も考え続けて、ずっと先を見ている彼女は、何かを押し付けたり判断するようなことはなく、この町から学んで帰ってくれたら嬉しいと、色んな場所にあちこち連れて行ってくれながら、淡々と彼女の考えを聞かせてくれた。


徳島駅から上勝町に行くには、公共のバスを使うか、有償のボランティアタクシーを予約していくことになる。上勝にタクシー会社はないため、ボランティアとして登録している人たちの中で、都合の合う人がいれば来てくれるそう。私はてるみんが迎えに来てくれるというので、お言葉に甘えて迎えに来てもらうことにした。徳島駅から上勝に着くまで一時間くらい。てるみんとインターン生のリンダに色々質問していたらあっという間だった。

ちょうどその数日前に、「今年はユニクロで服は買わない、服を買うならなるべく古着で、新品を買うなら環境に配慮していて誰の人権も侵害せずに作られた服を買いたい」というようなツイートしたら、ファッション業界で働いている人から何も知らないのに思い込みで話すな、メディアの情報を鵜呑みにするなとキレられ、彼女の言い分に全く納得できずモヤモヤしていていた。もっとひどい環境はいくらでもある、ユニクロはたくさんの雇用を生み出していて素晴らしい、自社工場で起きたことではないのだからユニクロに責任はない、古着を買って儲かるのは仲介業者だけ、等々が彼女の言い分で、二人にそのことについてどう思うか聞いてみた。

どの視点で見るかによって物事の捉え方って変わる、ファストファッションによって誰でも気軽にオシャレを楽しめるようになったのは事実だし、そういう視点から見たら良い面もあるのだと思う。でも例えそれが雇用を生み出していたとしても、誰かの暮らしを犠牲にしていいことにはならないし、古着を買うことは新しい服を作っている人たちの利益にはならないけど、環境には優しいよね、と言うような話になり、そこでやっと気持ちが晴れて、このタイミングで上勝へ来ることにしてよかったなと思った。

上勝はゼロ・ウェイストのような取り組みを町全体でやっているのだから、勝手に小さな村みたいな場所をイメージしていたのだけれど、めちゃめちゃ大きくて、車がないと全く生活していけなさそうな広さだった (Wikipediaによると面積109.68㎢)。上勝について話すと行ってみたいと言うフランスの友達は多いんだけど、車を運転できるか、上勝に友達がいないと難しそうで、観光客として訪れるのはなかなか大変だと思う。

てるみんのお家でお茶をして、ゴミの分別について教えてもらった。上勝町ではごみを45分別しているんだけど、ゴミの収集車はなく、それぞれがゴミステーションに自分自身で持ち込む仕組みになっている。じゃあ家に45個のゴミ箱があるのかと言ったらそんなことはなく、生ゴミ、紙類、洗って綺麗になったプラスチック、汚れが落ちないプラスチック、瓶、缶…みたいな感じでざっくり分別して、ゴミステーションに持って行ってから細かく分別しているそう。

ゴミステーションも実際に見学させてもらった。今新しいゴミステーションを建設中で、ここは仮の場所。常に職員さんがいて、分別で困ったときなどはいつでも聞けるそう。私が行ったときにはスーツケースをバンバン叩いて細かく分別している最中だった。


まとめられ圧縮された缶のゴミ。上勝町の人はBOSSのコーヒーが好きなのだろうか?ゴミを見ればその人がどんな暮らしをしているかわかるってその通りだなと思った。


これが新しく建設中のゴミステーション。めっちゃかっこいい、すごいなぁと思ったんだけど、てるみん曰く町の人の反応は様々で、現在の仮のゴミステーションがある程度問題なく機能しているのに、多額のお金を使って新しく建物を作ることはゼロ・ウェイストの理念に叶っているんだろうか?と疑問に思っている人もいるそうだ。確かにこうやって町のモニュメントとしてゴミステーションがあるのは、観光客的にはわかりやすいだろうけど、この建設のために多額のお金が動いているらしく、そのお金を他のことに使った方がいいんじゃない?という気もする。

てるみんも家の隣にある空き家を改装してゲストハウスにする計画を立てている中で、今あるものを使って極力お金を使わずに改装するのがいいのか、お金を使って業者に頼んで何かを買って綺麗に改装するのがいいのかを話し合っているらしい。

彼女はお金、労力、環境、時間の4つの要素の中でバランスを考えていかなきゃいけないと言っていた。例えば業者に頼んでゲストハウスを綺麗に改装してもらうことは、自分たちの労力と時間を節約することが出来るけど、お金も掛かるし、新しく物を買うことでゴミも出る。自分たちでやればお金は節約できて、今あるものを使えばゴミも出ないけど、その分の労力と時間が掛かる。でも綺麗に改装することで泊まりたいと思うお客さんが増えるかもしれないし、そういうことを全部引っくるめて何を取るか判断していくしかなくて、それって本当に大変だ。


上勝にはなんとクラフトビール工場があり、ゼロ・ウェイストの町なので建物は廃材を利用して作られていて、廃棄されていた果物の皮を使って香りづけしているビールなどを量り売りで買えたりする。併設のバーでテイスティングさせてもらったんだけど、超オシャレな空間で美味しいビール飲めて最高だった。


上勝を案内してもらうためにカフェがお休みの日に行ったので、残念ながらてるみんのカフェではごはんを食べられなかったんだけど、光がたくさん差し込む気持ちの良い空間だった。

もっとたくさんの場所に連れて行ってもらったし、面白い議論もたくさんしたんだけど、全部はとても書ききれないので、気になる人はぜひ自分で上勝を訪れて、てるみんと喋ってみてください!!!てるみんのゲストハウスは4月にオープンするそうです。

本当に素敵な町だなと思ったけど、新しく引っ越して来る人は年に数人で、半分以上が65歳以上の上勝では、亡くなる人の方が多くて、人口は減る一方。てるみんに次来るときは上勝なくなってるかもしれないよと言われてしまった。じゃあ私が上勝に住んでみたいかと言われると、一年くらいなら住んでみたいと思うけど、ずっと住みたいかと言われると今のライフスタイルとかなり変わることになるので、今の私には出来そうにないなと思う。

だから今はパリで、彼女からもらった多くのヒントを元に、考えることをやめないで、毎日の生活を見直して、持続可能な社会のために自分が出来ることをやっていきたい。今度は2週間くらい滞在してもっと上勝に知れたらいいなと思っている。てるみんありがとう!

Written by  Yuka Masuda
パリ在住のフロントエンドエンジニア。
東京のスタートアップ、米国企業のシンガポール、ダブリンオフィスで働いた後、2017年よりパリへ。
毎日アジア料理を食べ、柴犬を飼い、全くパリっぽくない生活を送っている。

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