田舎のキャリア論
「地方や田舎におけるキャリアについてお話を聞かせてください」
という妻へのインタビューの依頼があり、
そのことについて年末からふたりで話しをしていました。
そもそも上勝で暮らす中で「キャリア」という言葉を意識したこともなく、
そもそもキャリアってどういういみだったっけ?から始まり、
田舎でキャリアを築くことの意味を考えていました。
そんな矢先、東京でライターとしての仕事を経て、
三重、奈良、和歌山からなる紀伊半島を中心とした住まい、遊び、暮らしを伝える
kiiというウェブマガジンを運営する大越さんが、
ポールスターを訪れてくれました。
だいたいこういう爽やかな笑顔を持つ人に悪い人はいない
東京から地方へキャリアの舞台を移した大越さんに、
自分たちもこのウェブマガジンを始めたばかりなので、
どんなふうに記事を書いているのかとか、
何を大事に運営しているかなど初対面でいきなり質問攻めにし、
最後に、「ウェブマガジンにおける成功ってなんだと思いますか?」
と尋ねると、彼は「続けることですかね」と迷うことなく答えてくれました。
それは私達がこのウェブマガジンを始めるにあたっていちばん
大事なことだと思っていたので、嬉しくなりました。
Ⅰ.始めるよりも、続けること
私は田舎で事業をすることにおいて、
「続ける」ということは、「始める」よりも大事なことだと思っています。
特に、上勝町のように地域再生の先進地として知られ、
私達のような移住者が入ってくる地域では、
毎年数多くの事業が始まります。
そしてそのほとんどが、単年度の予算消化とともに終わっていきます。
お金で始まったことは、お金がなくて終わってしまうのです。
もちろん撤退することの重要性は理解していますが、
少なくとも何があっても続けてやるぞという心意気なく始められて、
あっけなく終わっていく事業に巻き込まれた地域の人々は、
どんどん疲弊していくように感じています。
だからこそ、「始める」よりも「続ける」ことが大事だと思うのです。
Ⅱ.田舎と都会における理想のキャリアの違い
都会では、どんどん新しいことを創り出し、
だめなものはすぐにやめて、次へ次へ進んでいくことが、
ひとつの理想的なキャリアとされるかもしれません。
しかし田舎においては、多くのことを作っては壊していく、
スクラップ&ビルドのスタイルでは、経済的にはもちろん、
巻き込まれる地域の肉体的にはもちろん、精神的な体力が失われていきます。
つまり田舎では、多くのことを始めている人ではなく、
どれだけひとつひとつの事業を大事に始められているか。
どれだけ丁寧に続けられているのか。
たくさんのプロジェクトや役職で埋められた履歴書よりも、
ひとつひとつの丁寧な仕事で埋められた履歴書こそ、
田舎における理想的なキャリア像ではないだろうかと思うのです。
そしてそんなキャリアを築いた人のところには、
外からの評価だけではなく、
内側から積み上げられた信頼や信用が生まれているように思います。
よくまちづくりコンサルタントは地域から嫌われるという話がありますが、
彼らにとっては続けることよりも多くのことを始めたことが実績となるので、
次第に信用や信頼が失われていくことは、至極当然のことなのかもしれません。
Ⅲ.始めるは易し、続けるは難し
このウェブマガジンはお金で始めたことではないので、お金が理由で終わることはありませんが、月に4本くらいの記事を作っていくだけでも、私にとってはなかなか大変なことです。
行き詰まり途中で現実逃避もします。大越さんに簡単にそれなりの記事を書く方法を聞いておけばよかった。
たったこれだけの記事を書くのにも、
ああでもないこうでもないと大変な思いをしながら書き上げています。
とまあ四苦八苦しながらも、これからも上勝の暮らしや気付きを丁寧に綴り、
長く続けていきたいと思っておりますので、
本年もどうぞよろしくおねがいします。



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